「プレスター・ジョンの王国を探せ!」
マルコ・ポーロが『東方見聞録』を発表したのと同じ頃、行ってもいない東方世界の旅行記を著した稀代のペテン師ジョン・マンデヴィル。世に出るのを厭い、苔と羊歯の庭いじりを唯一の喜びとしていた息子アーサーは、ある日教皇から呼び出され、亡き父の書に記されたプレスター・ジョンの王国を探すよう命じられる。
しかしその情報源は父の遺したデタラメ旅行記だった。
待ち受けるのは、羊のなる木や、魚にまたがるアマゾネス、犬頭人にマンドラゴラ、背中にギザギザのある怪物……
「ありもしない王国を探しに行くなど、人生をねずみの餌にくれてやるようなものだ」。
不満たらたらのアーサーに同行するのは、柄の悪い傲岸不遜な修道士と書物好きで夢見がちな弟。たよれる武器は、蝿を遠ざけることのできる指輪のみ。果たして父の書に真実はあるのか。驚異と笑いに満ちた奇想天外な旅へ、いざ(しぶしぶ)出発!
ーー東洋奇譚をもとに描く宮田珠己の新境地、ここに誕生。
網代幸介氏による幻想的なじゃばら絵巻つき。