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「一般的に病院の内科では、既往症のことをエピソードとも言う。そのエピソードがいくつか重なってメイジャーなものになると、ヒストリーとも言う。」
編者のアメリカ文学研究における恩師 須山静夫氏の壮絶な半生を描いて話題となった『S先生のこと』(第61回日本エッセイスト・クラブ賞受賞)を書き終えた後、もう一人の恩師である大橋吉之輔氏(1924-93、慶應義塾大学名誉教授)のことを書かねばならないと思い立った。
大橋氏は、ヘミングウェイ、スタインベック、フォークナーといったアメリカ文学の研究、翻訳の大家として知られる。中でもシャーウッド・アンダスン研究の世界的権威であった。
しかし、その死から20年余り。記憶を辿るには遠くなった恩師の生涯を恩師自身に語ってもらうべく、書き残された文章を収集することから始めた。そうして選ばれた46篇の文学論やエッセイは、晩年に至って「私小説」の領域に近づく。編者によるサイドストーリーを交えて描き出される、ユニークで傑出したある文学者の生涯。
■目次■
小伝 大橋吉之輔先生
第一章 「大橋吉之輔」の形成
ヒロシマ・ひろしま・広島
菊池寛のトランク
書物とのつきあい
シェイクスピアのこと
Episode 東大時代の先生
厨川先生のこと(厨川文夫氏への追悼文)
“Three Lives”(龍口直太郎氏への追悼文)
思い出すこと(西脇順三郎氏への追悼文)
師恩(西川正身氏への追悼文)
Episode 大橋二等兵
第二章 先生の文学論
アメリカ文学へのアプローチ
Episode 大橋ゼミ
スタインベックの文学
アーネスト・ヘミングウェイの死
ウィリアム・フォークナーの人と作品 ―私は人間の終焉を信じない―
大橋健三郎著『フォークナー研究 1』
Episode 大橋先生の文学論
いまなぜユダヤ系なのか
谷崎、荷風の作品を評価 来日の米小説家ソール・ベロー
死を想定しない倫理
Episode 先生の、そして私の『ライ麦畑でつかまえて』
本国におけるメイラーの評価
『カリフォルニア州ヨコハマ町』
Episode 大橋先生と翻訳
事件と文学の間柄
南部女流作家の写