息苦しい日常から逃げ出した
僕が出会ったのは
亡き父の愛した景色と、君だった。
『流星コーリング』で広島本大賞を受賞した著者による、
自分の居場所を求める若者たちの葛藤と足掻き、その先にある確かな一歩を描いた、
瑞々しい傑作青春小説。
あらすじ
何者にもなれていない自分を、恥ずかしがらなくていい。
小さな地方都市で写真店を営んでいた父の影響で、カメラマンを目指すようになった匠海。父の死後、母との関係性が悪くなった匠海は、逃げるように東京の写真専門学校に入学する。しかし、待っていたのは、学費と生活費を稼ぐだけで精一杯の毎日。これを乗り越えれば、きっと夢に近づける――。そう信じ込み、なんとか自分を奮い立たせていた匠海だが、ある出来事をきっかけに、大学を1年休学することを決める。
実家にも帰れず、衝動的に向かった先は長野県・辰野市――かつて父が蛍の写真を撮影した場所だった。なんの計画もなく訪れた匠海を出迎えてくれたのは、父が愛した美しい景色。そして、それぞれの事情で辰野に移住してきた人、訳あって辰野を離れらない人との出会いが、彼の心を変えていく――。