十代の頃から宮沢賢治は故郷の山々をくまなく歩いていった。
特に岩手山には魅かれ、健脚を誇るように何度も山行を決行した。
山に登り、里に下りて、宮沢賢治は見た光景を忘れまいと
一所懸命にスケッチをして詩や童話を生成していった。
たとえば朝の霧の中で、山の一角が白く光って見える。
朝の光がたんに何かに反射しているだけかもしれない。
宮沢賢治はこの光はただの現象ではなくもっと深い意味があると考える。
自然から自分へのメッセージなのだと。朝の山の中にいて心揺さぶられていく。
自分と世界が呼応する瞬間がある。自分はここにいる。世界は目の前に開けている。
自然を知るために、今こそ宮沢賢治の山行を考えてみたい。
宮沢賢治の原風景をとおして、作品の奥にある彼の思いを考える。
見えない世界の不思議を発見する旅へ。