元脳外科医で、最高学府の教授でもあった夫・若井晋。
その彼が若年性認知症になるとき、本人は、そして家族は、どうしたのか。
長い苦悩をへて病を受け入れ、新たな道へと踏み出した
夫婦の軌跡を、妻・若井克子が克明に描き出す。
●当事者・若井晋が語る「認知症の人から見た世界」とは?
「最初は『何でだ』と思っていました」
「けれども私は私であることがやっとわかった」
「私が見ている感じと、みなさんが見ている感じが違うんです」
「僕の住んでいる世界は、たいへんなんだよ」
「『大変だったなあ』と一言、言ってくれればよかった」
【著者・若井克子の言葉・・・本文より】
晋は若年性アルツハイマー病になって、知識を、地位を、職を失った。
それは、世間からは「地獄」に見えるのかもしれない。
だが私には、むしろ、すべて失ったことで「あるがまま」を得て、
信仰の、人生の本質に触れたように感じられるのだ。
病は人生の一過程に過ぎない。認知症になっても、私は私であることに変わりはない――。
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