曹操は風采の上がらぬ小男だったが、劉備は堂々たる偉丈夫で、人を心服させる不思議な魅力を持っていた。曹操を知の人とするなら、劉備は心の人であったろう。関羽と張飛が死を賭して献身し、諸葛亮が主の死後にも誠実無比の忠節を尽しつづけたのは、そのためであった。「蜀書」全十五巻には、蜀の遺臣陳寿の亡国に対する思い入れと、諸葛亮への深い敬愛がこめられている。