福祉制度が実動しないタンザニアで、「ふつう」に働けない障害者たちは、いかに生計を立ててきたのか。
植民地期から現在までの彼らの姿を追う。
障害学、都市下層研究、社会福祉、地域研究の枠組を越えて路上に「居る」障害者たちの生活世界を描く、フィールドワークの精華。
(本文より)
路上のそこここに「居る」人たち。やってくる人々に手を突き出し声をかける者もあれば、ただ佇んでこちらに目をやる者、笑顔で挨拶をしてくる者。手足が欠けていたり、
年老いていたり、ぐったりした様子の子どもを抱えていたり。…彼らは…一体どうやって生活しているのか。
本書でみてきた事例とは、身体上に「欠損」…をもちそこから完全に自由ではないものの、それに完全に生を縛り付けられるわけではない人々の姿であった。…それは…生きたいように生きようとすることが許される世界の、不確実性と可能性に満ちた様子ともいえる。