美しい標本と、
胸をしめつける堀江敏幸の
掌編との二重奏。
[ 堀江敏幸書き下ろし「記憶の葉緑素」所収 ]
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1世紀の時を経てなお残る、花々のかすかな色。
指先の気配――。
南フランスの蚤の市の片隅に置かれた小さな箱。
中には100枚ほどの花の標本がひっそりと収められていました。
まるで絵を描くように、枝葉や花片がていねいに台紙に配置され、ごく小さな薄紙で留められている、あまりに美しい植物標本の数々……。
遠い昔、見知らぬ異国の女性が、スイスとフランスの国境近くの山や草原で花を摘み、手を動かしてていねいに作った標本から、想像をめぐらせ、記憶を辿ること。
かつて生きていたものたちの息づかいが聞こえてくる奇跡――。
*植物標本95点収録
*採取地と学名、和名の索引つき
[プロフィール]
●堀江敏幸(ほりえ・としゆき)
作家・フランス文学者・早稲田大学文学学術院教授。
著書『おぱらばん』『雪沼とその周辺』『河岸忘日抄』『なずな』『その姿の消し方』『音の糸』『曇天記』『定形外郵便』など多数。
●飯村弦太(いいむら・げんた)
東京都文京区湯島の古道具店「ATLAS」店主。
→ https://www.atlas-antiques.com/