◯戦場なんか知らなくても、ぼくたちはほんとうの「戦争」にふれられる。そう思って、この本を書いた。◯教科書を読む。「戦争小説」を読む。戦争詩を読む。すると、考えたこともなかった景色が見えてくる。人びとを戦争に駆り立てることばの正体が見えてくる。 ◯古いニッポンの教科書、世界の教科書を読み、 戦争文学の極北『野火』、林芙美子の従軍記を読む。 太宰治が作品に埋めこんだ、秘密のサインを読む。 戦意高揚のための国策詩集と、市井の兵士の手づくりの詩集、 その超えられない断絶に橋をかける。「彼らの戦争」ではなく「ぼくらの戦争」にふれるために。◯目次まえがき 第1章 戦争の教科書 1・ニッポンの教科書 あたらしいこくご 教科書なんかつまらないとずっと思っていた 教科書の中にある、もうひとつのことば、戦争のことば ぼくたちの父や祖父は、子どもの頃、こんな教科書を読んでいた 2・ドイツの教科書、フランスの教科書 人の心を萎えさせるような、断固とした「声」 歴史をためらいがちに語る「声」3・その壁を越える日 植民地からの「声」 ぼくたちがたどり着く場所 第2章 「大きなことば」と「小さなことば」 戦争と記憶、庶民の戦争 『この世界の片隅に』の語り方 戦争なんか知らない 「大きなことば」と「小さなことば」 「大東亜」なことば 「ひとすぢのもの」 「小松菜つむ指の露深き黒土に濡れ」 「こつこつと歩いて行く」 ぼくたちは戦場へ行った 幻の詩集 加藤さんのことば 西村さんのことば 長島さんのことば 佐川さんのことば 風木さんのことば 最後に、山本さんのことば 第3章 ほんとうの戦争の話をしよう 1・正しい戦争の描き方 ほんとうの戦争の話をしよう 死の国にて 2・彼らの戦争なんだぜ 「遠い」ということ 統合失調症とされた作家たちのことば すべてが「遠い」小説 『野火』がたどり着いた場所 第4章 ぼくらの戦争なんだぜ その1・ごはんなんか食べてる場合じゃない その2・女たちも戦争に行った 「平時」の思想 彼女は戦争に行った その3・ぼくたちが仮に「戦場」に行ったとして、 最後まで「正常」でいるためには 「私」は撃たない その4・戦場から遠く離れて ふたつの「国」と「ことば」の間に生まれて 夢の世界をさまよって 第5章 「戦争小説家」太宰治 加害の国の作家 ずっと戦争だった 小さな二つの小説 「真の闇」の中を歩く 文学のために死んでください 純情多感の一清国留学生「周さん」のこと あとがき