かつて屋久島で歌われていた「まつばんだ」は、琉球音階が取り入れられた民謡です。ただ、屋久島は沖縄や奄美からはるか北方にあり、琉球文化圏ではありません。なぜ屋久島に琉球の名残があるのか、ごくわずかな例を除いて本格的な調査が行われてきませんでした。それならば、と我々が3年がかりでフィールドワークを敢行。そこから見えてきたのは、沖縄〜鹿児島〜南西諸島に暮らす海洋民たちの生活史でした。同時に、この民謡を復活させようとする島民たちの活動も追っています。本書は、そんな旅や歴史民俗の要素を含んだノンフィクション書籍になります。
推薦コメント
消えゆくものは 消えてゆく その理由は 誰ひとりとして それを思い出さなかったから… たったひとりでもいい 「それを決して忘れたくない」 と切望する人がいれば “それ”は未来へと運ばれてゆくのだ 宮沢和史(シンガーソングライター)
降りすぎる雨の中 険しすぎる山道を 幻の古謡の放つ香りに手まねきされて 奥へ奥へと 自然の強さにかき消されそうになりながら それでも確かに聴こえてくる おばあからおばあへ受け継がれた 歌の鎖を辿って山頂へ その道は海を渡り どこまで続いているのだろう コムアイ(アーティスト)
ページをめくるたびに 次々と歌の新たな航跡が現れ 最後には見たことのない 新しい地図が自分の頭に浮かびあがってくる 島を旅するための手がかりに満ち満ちた 気持ちの良い本でした 石川直樹(写真家)