かつて京都に「河原町のジュリー」と呼ばれる有名なホームレスがいた。無数の視線に晒されても悠然と目抜き通りの真ん中を歩き、商店街の一等地で眠る男。彼はいったい何者なのか? 新人警察官・木戸は街の人たちが噂するこの男にしだいに心惹かれていく――。実在した伝説のホームレスをモデルに、遷りゆく時代の影と人間の運命を描いた傑作長編。第10回京都本大賞受賞作。巻末に著者の特別エッセイ「一九七九年という時代」を収録。