地方から戦後民主主義をどう構築したのか?
戦争を生き抜いた知識人は、どのようにファシズムの時代を悔悟し、戦争体験と折り合いをつけて社会を再生していったのか。若い力をいかし戦後の反省から政治、文化、教育、美術から地域観光、環境政策まで、どう制度や世論を構築していったのか。
鎌倉という地方から問う新たな歴史。
「本書は、戦中戦後の鎌倉を具体的な事例に、ポスト・ファシズムの日本がどのように人間の復興を成し遂げることができたか、を説明する。「あの日」を忘れず、多くの悲しみと苦しみを受け止め、合理的で平等な仕組みを制度化しようと試みた主要登場人物一人ひとりの強い意志、を。」(訳者解題より)
◎目次
日本語版序文
謝辞
図版リスト
序章 ポスト・ファシズムの政治文化
ファシズムへの回帰を防ぐ
ファシズム後――悔恨共同体
遠回しに話される交渉
民主的な制度を創設する
第一章 鎌倉という場所
地域コスモポリタニズムの再創出
戦後のビーチ文化
第二章 鎌倉アカデミアと人文教育
ポスト・ファシズムの未来のための教育
人文学を選択する
学生と教員の交流
アカデミアの終焉
第三章 物語を紡ぐ博物館――神奈川県立近代美術館
美術館を創設する
土方の知的遍歴
展覧会のテーマ
都市政策としての美術館
現代中国を受け容れる
第四章 都市行政――社会科学と民主主義
地方自治体を強くし、民主主義を形成する
正木市長の知的な旅
土地利用と環境保全
平和運動、民主的空間、そして都市外交
政治的怨恨の源泉
終章
参考文献
解題(奥田博子)
訳者あとがき(中野耕太郎)