スピリチュアルと科学が逆転した、架空の日本で繰り広げられる不条理劇。
平熱は38度で、病気の原因はクスリを飲むこと――お祈りやおまじないで
すべての病気を治す世界を描いたディストピア小説。
『皆勤の徒』『宿借りの星』で日本SF大賞を2度受賞した著者の新境地!
結婚式場に勤める土屋は、38度の熱が続いていた。
解熱剤を飲もうとすると妻の真弓に「免疫力の気持ち、なぜ考えてあげない」と責められる。
……「三十八度通り」
真弓の母は、全身が末期の「蟠り」で病院のベッドに横になっていた。
すぐに退院させられ、今後はその病気を「るん(笑)」と呼ぶ治療法を始めることになる。
……「千羽びらき」
真弓の甥の真は、近くの山が昔の地図にはないと知り、登りはじめた。
山頂付近で、かわいい新生物を発見する。それは、いまは存在しないネコかもしれなかった。
……「猫の舌と宇宙耳」
【著者略歴】
酉島伝法(とりしま・でんぽう)
1970年、大阪府生まれ。作家、イラストレーター。
2011年、「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞し、
13年刊行の作品集『皆勤の徒』で第34回日本SF大賞を受賞。
19年刊行の第一長編『宿借りの星』で第40回日本SF大賞を受賞。
他の著書に『オクトローグ 酉島伝法作品集成』がある。