五七五の十七文字。俳句という短詩型文学はいかなる特徴をもち、他の文芸とどう違うのか?近代の散文に比べて、俳句はやはり「第二芸術」なのか?本書はこれらの問いに対し、俳句という日本独自の文芸がもつ特質を明らかにし、そのすぐれた所似を示した出色のエッセーを集成したものである。著者はこれまで、『修辞的残像』『近代読者論』『エディターシップ』などの著作において、きわめて独創的な見解を発表し、日本語の論理と表現の問題を一貫して論じてきた。本書もまた、俳句的な表現を詳細に論じつつも、広く日本語の個性に及んでいる。枯れ・冷え・耳の形式・季語のテンス・人脈から杉風論の文体・加藤楸邨・角川源義まで、さまざまな角度から俳句の世界を照射した本書は、同時にすぐれた日本語論=日本文化論でもある。