音や聴覚を意識した視覚芸術か、あるいは、音楽の枠組みを超えた音響芸術か――美術・音楽・メディア・空間の交錯点に迫る
音や聴覚にまつわる様々な作品が一見雑多に包摂される「サウンド・アート」という曖昧で魅力的な芸術の領域は、どのように成立したのか。視覚美術、音響芸術、音響再生産技術への注目、サウンド・インスタレーションという四つの文脈から、各系譜を丹念に辿り、徹底的に整理・解説する!
私はサウンド・アートとは何かと問われたときに、サウンド・アートは、広い意味で音や聴覚に関わるアートを意味するラベル、あるいはジャンル名である、と答えるようにしている。単なる音楽でも単なる視覚美術でもないが、音楽でも美術でもないまったくの別もの、というわけでもない。つまりサウンド・アートには厳密な定義はなく、個々の論者や作例によってその意味するところは異なる。とはいえ、サウンド・アートという言葉で参照される大まかな領域は存在する。本書が扱うのはその漠たる領域である。「はじめに」より
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著者紹介
中川 克志(ナカガワ カツシ)
1975年生まれ。京都大学大学院文学研究科美学美術史専修博士後期課程修了。博士(文学)。専門は音響文化論。19世紀後半以降の芸術における音の歴史、理論、哲学(音のある芸術、サウンド・アート研究、音響メディア論、ポピュラー音楽研究、サウンド・スタディーズなど)。
現在、横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授。都市科学部都市社会共生学科、都市イノベーション学府建築都市文化専攻都市文化系(芸術文化領域)、Y-GSCのスタッフ。
主な業績に、共著『音響メディア史』(2015年、ナカニシヤ出版)、共訳ジョナサン・スターン『聞こえくる過去――音響再生産の文化的起源』(2015年、インスクリプト)、「日本における〈音のある芸術の歴史〉を目指して――1950〓90年代の雑誌『美術手帖』を中心に」(細川周平(編)『音と耳から考える――歴史・身体・テクノロジー』(2021年、アルテスパブリッシング)収録)など。