知の愛である哲学が非常識の世界に属するのに対し法学は常識の世界に属する。両者の出合うところ人間存在の根源的問題が立ち上がる。世界を支配する理性が社会において自然法として現れ、個人の内にも浸透し秩序を齎(もたら)すという順接的関係が疑われるところに生まれる諸問題。正義の根拠、人間性と社会秩序、法と実力など、法哲学の論点を易しく解説。
正義の根拠とは? 法の拘束力とは?
法学と哲学の逆説的関係から生まれる根本問題に挑戦
知の愛である哲学が非常識の世界に属するのに対し法学は常識の世界に属する。両者の出合うところ人間存在の根源的問題が立ち上がる。世界を支配する理性が社会において自然法として現れ、個人の内にも浸透し秩序を齎(もたら)すという順接的関係が疑われるところに生まれる諸問題。正義の根拠、人間性と社会秩序、法と実力など、法哲学の論点を易しく解説。
A:赤信号だ。渡るのはよせ。
B:いや轢かれて死ぬのは俺だ。放っておいてくれ。
ここでAが何と答えても、それは倫理学・法哲学上の1つの立場といいうる。例えば「ああそうか、じゃ勝手に死ね」「馬鹿をいえ、轢いた運転手やら、後続車やら、みんな大迷惑だ」「死ぬのはお前の勝手だが、法律を破るのはお前の勝手じゃないよ」「生命あっての物種じゃないか」 このように、私たちは、日常生活においても、もろもろの法哲学的問題に取り巻かれて暮らしている。――<本書より>