【推薦】武田砂鉄さん(ライター)
歴史は常に今を問いかけてくる。
聞かれるのを待っている声は、誰のもとにも在るのかもしれない。
人類学者が、自身の家族史をひもときながら、彼らの足跡を訪ねて紡ぐ、等身大の〈昭和と戦争〉。
家業を「不急不要」とされ、祖父は軍事研究の道へ。
若き陸軍将校だった大叔父は1945年3月、沖縄で消息を絶った──。
実家の古い蔵に残された手記や写真、彼の婚約者が八十年大切に持ちつづけた手紙……
人類学者として、戦争に関与した者の親族として葛藤を抱えながら足跡を辿る著者は、その地で生きる人びとの声に耳を傾け、無きものとされた存在に目を凝らす。
「死者たちの言葉をたどり、生き延びた人たちの声を聞き、それをいま生きている人たちに伝えるだけではなく、死者たちの元へ送り還そうとすること。それはひとつの、弔いの仕方だろうか。」
戦地から届いた当時の手紙をひもとくと、想像もつかなかった戦時中の暮らしが生き生きといまに蘇る。
歴史に沈められた、戦争の時代を生きた人びとの声を今に届けるノンフィクション。