地域経済・地域社会の活性化を目的に各自治体が発行する「地域通貨」が今、注目されている。
地域通貨は、特定の地域の中で流通し、地域住民が地元の参加店舗で使う通貨のこと。近年は「デジタル通貨」の形式で発行されることが増えて利便性が上がり、買い物のほか、ウォーキングなどの健康増進活動や地元のボランティア参加通貨でポイントを得ることもできる。「市民アプリ」として行政からのお知らせを配信したり、地元の図書館カードとして利用ができるようになったり、地域の医療機関の検索ができる仕組みを取り入れ、地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の強力なツールとしても運用を実施・今後検討する自治体が増えている。
2024年度には政令指定都市として初めてさいたま市が地域通貨の導入を開始、今後ますますの追い風となりそうだ。
本書の著者、納村哲二が代表取締役社長を務めるフェリカポケットマーケティング(FPM)は、ソニーの社内ベンチャーとして2008年より地域通貨に取り組み、2024年現在、120以上の自治体のデジタル地域通貨の企画・設計・開発から運用までを提供する。
設立以来16年間、納村の一貫した思いは「地域通貨によって地域経済が循環しながら自立できる仕組みをつくる」こと。
限定された地域でしか使えないという制限があるからこそ、日本全国どこでも使える「円」よりも地域で使われ、地域を元気にし、住民同士の結びつきや地元愛を高めることにつながる。それが本書のタイトルである「円」より「縁」の効果だ。
自治体の担当者や商店街の店主らの悩みに耳を傾け、地域通貨という仕組みを通しての解決策を提案し続けきた納村が、その経験を通して、地域経済を元気にし、地元の人と人のつながりを高める地域通貨導入のノウハウと事例をまとめたのが本書。地域通貨導入済みの自治体、今後導入を検討する自治体の担当者はもちろんのこと、地域を元気にする仕組みづくりに関心を持つすべての人にとって大きなヒントとなる必読の一冊。