なぜ、技能実習生の赤ちゃん遺棄事件は続くのか――。
妊娠を理由に職を追われ、帰国させられる外国人の労働者たち。
ベトナム人を支援する女性僧侶が、妊婦の悲しみと苦しみに寄り添った記録を綴る。
ベトナム人の「失踪」が相次ぎ、「奴隷労働」と国際的に批判された外国人技能実習制度。
その廃止は決まったけれど、近年は技能実習生が孤立出産に追い込まれ、赤ちゃんの死体を遺棄する事件が立て続く。
どうして「悲劇」は繰り返されるのか? 新制度が始まれば、もう起きない?
マタハラが許されないこの時代、まるで妊娠したことが罪であるかのように仕事をやめさせられ、日本から追い出される数多くのベトナム人女性たち。
寄る辺なく悲しみ、悩み、苦しみを抱えたそんな妊婦のために戦い、新しい「いのち」の誕生をやさしく支えてきた女性僧侶がいる。
その慈悲の記録は、日本社会にいまだ残る「男尊女卑」をも映し出す。
マタハラが横行する技能実習生・留学生の妊娠・出産・育児
●「妊娠は病気だから仕事はできません」と会社に言われた
●退職させられそうでも技能実習の関係機関は支援しない
●児童相談所が赤ちゃんを連れ去り、帰国させようとした
●60代日本人男性との子を出産し、認知を拒否される
●出産後の保育園探しに難航し、育児疲れで孤立する
【著者略歴】
吉水慈豊(よしみず・じほう)
NPO法人日越ともいき支援会代表理事、浄土宗僧侶。1969年、埼玉県出身。大正大学を卒業後、1996年に浄土宗の伝宗伝戒道場を成満し、僧侶となる。日本に在留するベトナム人技能実習生・留学生などが若くして命を落とすことに憤りを感じ、2013年に日越ともいき支援会を設立し、その命と人権を守る支援活動を開始する。ベトナム人技能実習生・留学生の増加にともない、劣悪な環境に置かれている彼らからの相談が急増。活動は住居の確保、帰国困難な若者たちの保護、労使交渉、妊産婦支援などにまで及び、当会は2020年に東京都より非営利活動法人として認可された。本書が初の著書。