近代文学史に屹立する志賀直哉。著者は、この文章の名手による珠玉の作品群とその水面下に大きく裾なす日記、草稿、書簡などの中に、作家の内面的葛藤と成熟を読み取っていく。本書は透徹した批評で知られる文学者による本格的な作家・作品論である。上巻は、初期の作品群から「城の崎にて」までを取り上げる。