戦争は敗れて終わった。太宰の文学の放つ妖しくなまなましい光芒は、戦後の人びとの眼にいっそう鮮明に映らずにはいなかった。彼は戦前においてすでに作家であった。終戦のとき、青森県金木の生家にいた太宰は、ただちに「パンドラの匣」を連載するとともに戦後の活動をはじめた。本巻には、その津軽疎開中に書いた全作品を収める。