科学と技術が高度に発達した現代社会にあって文学はどのような意味をもちうるだろうか。小説・詩歌という狭いジャンルに限定することなく、すぐれた文体と世界の全体に対する態度であると文学を広く定義するとき、文学ははじめて科学に拮抗する。このような加藤周一の文学に対する態度は、アラゴンやサルトルなどのフランス文学に負う。