貴子は交際して一年の英明から、突然、他の女性と結婚すると告げられ、失意のどん底に陥る。職場恋愛であったために、会社も辞めることに。恋人と仕事を一遍に失った貴子のところに、本の街・神保町で、古書店を経営する叔父のサトルから電話が入る。飄々とした叔父を苦手としていた貴子だったが、「店に住み込んで、仕事を手伝って欲しい」という申し出に、自然、足は神保町に向いていた。古書店街を舞台に、一人の女性の成長をユーモラスかつペーソス溢れる筆致で描く。「第三回ちよだ文学賞」大賞受賞作品。書き下ろし続編小説「桃子さんの帰還」も収録。