六〇年前に執筆された著者初の長篇小説である本書は、アジア太平洋戦争の日々を主題にしている。戦争に非協力を貫く医学生を主人公に、登場人物それぞれにとっての戦争末期から敗戦までの日々を瑞々しく描き出す。銃後における人間性の抑圧、恋愛と孤独、一九四五年八月の解放の意味が深く問い直される。