妻の墓参の帰り、娘の手を引きながら森の山道を歩いていると、 白装束の人影を見かける。 行き倒れかと案じてと近寄ると、娘の口から、 老婆の祈りのような言葉ならぬ言葉が語り出される……
個を超えてつながる命や情念の奔流を描いた最新作「鈴の音」をはじめ、 「桃」「ナイフ」「空に住む木馬」「王と詩」、 三田文学新人賞受賞作「青空クライシス」。
「郷里」をまっすぐ、時に影のように描いて忘れがたい余韻を残す全六篇
「魂を抉る言語以前の野生の叫びが、透徹した小説世界のど真ん中を貫いている。」 推薦 吉村萬壱氏