大著『メタヒストリー』で歴史学界に衝撃を与えた著者は、同時に、その歴史理論が事実とフィクションの区別を相対化するものであり、ホロコーストのような「限界に位置する出来事」の表象においては「真実」を歪めてしまうという厳しい批判にさらされた。本書は、ホロコーストの表象可能性について思索を重ねた著者が辿りついた、「実用的な過去」という概念と、歴史叙述の方法論を詳述した最新論文集である。ホワイト歴史学の到達点。