19世紀末、パリ。オペラ座の地下に潜み、心を閉ざしたまま闇の世界を支配する怪人。男はその醜い容姿ゆえに、それまで愛というものを知らなかった。オペラ座の歌姫に生涯ただ一度だけの恋をするまでは。だが、ある晩、あの運命の事件は起こり、男は傷ついた心を抱え、忽然と闇の奥へ消えた。その行方は杳として知れなかった。-13年後。一通の手紙がニューヨークのある男の元に届く。男とは、巨万の富と絶大な権力を手にし、この街を支配する陰の実力者。そして何と、この男こそが、パリから消えた怪人だったのだ。人間たちを憎むように金の亡者と化していた怪人は、この手紙によって13年ぶりに、おぞましくも甘美な過去へと引き戻されることになる。そして-再び運命の輪は、終末へ向かってゆっくりとまわり始めた-。不朽の名作『オペラ座の怪人』、ここに完結。