江戸時代末期の文人僧良寛は、不思議な人物である。禅僧かと思って接すると、少しも説教をしなかったという。そして芸術に勝れていた。しかも、漢詩、書芸、和歌の三種とも、他の人の追随を許さぬ高い品性を蔵していた。それでは文人かと思って見ると、その作品は当時の規約にあまり従っていない。それに、ほのぼのとした逸話が、抜群に多い。こうした人物を生んだ環境やら、接した風景を、羽賀康夫氏は清らかな思いそのまま、カラー写真で表現した。そこには、良寛の崇高な魂が宿っていて、見る人の眼を引きつけて放さない。それに良寛の生涯を簡潔に表す文がついており、良寛を知るための入門書としても、むだがなく美しい書物になっている。