両親の突然の死により、愛猫とともに都心の高層マンションの住人となった主人公・直実。そこはまるで“空”に住んでいるかのような、浮遊感と非現実感を味わわせる不思議な空間だった――。
抱えてしまった大きな喪失感を埋めるように、偶然、言葉を交わした同じマンションに住む有名人と逢瀬を重ねる。実らぬ恋と知りながら黒い情交の深みにはまっていく一方、かけがえのない存在だった愛猫のハナが難病のため死に至る。
虚脱感、自責の念、自暴自棄、自己嫌悪・・・・・・。さまざまな感情が交錯し、徐々に壊れていく直美。その荒んだ暮らしを立ち直らせたのは、彼女をマンションに呼び寄せた親族、そして友人の、献身的な励ましと愛だった――。彼らに助けられ、いつしか自分を取り戻す直実。
そして今も“空”に住んでいる。心穏やかに、地に足のついた暮らし方で。
“人は、人によってしか救われない”。
誰にでも起こりうる現代的テーマを孕んだ、喪失と再生の物語――。