そのとき赤竜の軍旗を掲げ、アーサー王は甦った。
ケルトの民ブリトン人の島だったブリテン島をローマ軍が征服し、属州として支配を開始したのは一世紀中頃。五世紀に入るとローマは撤退、アングロサクソン人が侵入を始める。以来ブリトン人は、後にウェールズと呼ばれる島の西の隅に追いやられ蹂躙されながらも、外敵イングランドに抵抗を続けた。そして一四八五年、ついに〝勝利〟の日が訪れる。それはあまりにもドラマチックな大逆転劇だった――。
本書は、救世主「アーサー王」の再来を信じ、一五〇〇年にわたり強大な敵に抗い続けた、ウェールズの誇りと栄光の物語である。
「アーサー王伝説」の元ネタとなった歴史的背景がこの一冊で丸わかり
大ヒットスマホアプリ『キング・オブ・アバロン』も「アーサー王伝説」をモチーフにしているなど、これまで数多くのヒット映画や舞台などで世界中の多くの人に親しまれてきた「アーサー王伝説」。この伝説は、なぜ、どこで、どのように生まれ、育まれたのか…。歴史的な真実を知りたい読者には、感動的かつ格好の一冊だ。
●プロローグより
そして、ついに「ウェールズ人」がイングランドの王となるときを迎えます。一四八五年八月二二日。イングランド中部レスターシャー州で行われた戦い、世にいう「ボスワースの闘い」でウェールズのシンボル、赤竜を軍旗に掲げて兵を鼓舞し、シェイクスピアに大悪党として描かれたイングランド国王リチャード三世を葬った男、ヘンリー・テューダー。彼こそ、イギリスを世界に覇を唱える海洋国家へと導いていったあのエリザベス一世女王の祖父であり、近代英国史の幕を開けたテューダー朝の開祖ヘンリー七世でした。