密教招来の大いなる希望を胸に、まだ無名の空海は延暦23年(804)、遣唐留学生として唐に渡った。福建省に漂着後、その詩文、書蹟の才は各地で注目され、空海は長安に入る。当時、盛んであった景教など新知識の吸収に努める空海は、やがて密教継承の大阿闍梨恵果の知遇を得る。曼陀羅の人、空海の中国での足跡を描く長編歴史小説。