よくないことが家の中で次々に起こる。インチキな占い師の言葉を信じた妻の懸願をしぶしぶ受け入れ、作家は鳥取の砂丘へ出かけた。雨の中、妻が両手が支える杭の頭を木槌で砂に打ち込みながら彼は思う。「これが人生だ。これで良いのだ」。表題作「夫婦の一日」のほか「六十歳の男」「日本の聖女」など計五篇を収録。老いとは、死とは、そして信仰とは…。生涯をかけて日本人にとってのキリスト教を追究し、昨年9月逝去した遠藤周作の最後の純文学短篇集。