蟻のごとく働くこと十年。都の女を愛し、詩で心慰め、現場仲間と苦楽を共にした。外型を焼き固め、鋳込み、再び型どりをする。繰り返しの過酷な毎日でも、国人は仏の教えと「わずかな言葉」を頼りに、必死に生きた。そして遂に大仏は完成したが…。家族に看取られることもなく野辺に散った無名の者たちの、かくも深き歓びと、痛切なる哀しみを描く。