海は船の通る道であると同時に、物いわぬ漂流物の道でもある。著者は漂着物を探して縄文・弥生時代にまで遡り、文献史料にも注意を怠らず、また漂着物のルーツを尋ねて、沖縄やフィリッピンにも渡った。島崎藤村が「梛子の実」で歌いあげた黒潮と望郷のロマンは、国際交流の海辺の民俗学、そして考現学として結実した。本書は興趣あふれる「漂着物学」への誘いの書である。