忠臣蔵は、なぜ、これほど人々を惹きつけるのか。関ヶ原から百年、武家政治は"均衡と安定"を成し遂げた。元禄バブルの徳川政権が、やがて長期低落へと向かう節目の時期に、将軍・綱吉のお膝元、江戸で"事件"は起こった。播州赤穂の浅野内匠頭の刃傷から吉良邸討ち入りへの顛末は、いちはやく浄瑠璃となり、歌舞伎となって、庶民の喝采を浴び、全国に広まった。武士の鑑・赤穂浪人の物語を、歴史に写してみると何が見えてくるのか。赤穂事件の史実と芝居『仮手本忠臣蔵』の虚構を自在に往還しながら、洒脱な語り口で綴られるユニークな歴史読本である。