ジョン・ケンドルが調教師トレメインの伝記執筆を引き受けたのは、空腹だったからだった。サヴァイヴァルの専門家であるケンドルは、念願の作家としてのスタートを切ったばかりだったが、経済的にはどん底の状態にあった。やむなく、畑違いの仕事の取材のため、彼はトレメインの厩舎がある丘陵地帯へ赴いた。競馬の世界とトレメインの人柄は、予想外に彼を魅了した。ところが、まわりの人々とも親しくなった矢先、行方不明だった厩務員アンジェラの他殺体が森の中で発見された。容疑は厩舎関係者に向けられ、部外者であるケンドルは地元警察から協力を要請される。警察がまず疑ったのは、アンジェラの遺体のそばで私物が見つかった、トレメインの隣人ハリイだった。窮地に立たされたハリイのもとに、何者かから彼の無実を証明するという謎の呼び出しが来る。ケンドルとハリイは指定されたボートハウスへ行くが、そこには恐ろしい陰謀が張りめぐらされていた。森と原野の丘陵地帯で起きた殺人事件に挑むケンドルの推理と、やがてサヴァイヴァルの技倆をつくして立ち向かわなければならなくなる非情の罠とは?