香港西区警察署の許友一巡査部長は、ある朝、マイカーの運転席で目が覚めた。酷い二日酔いで、どうやら自宅に帰らず車の中で寝込んでしまったらしい。慌てて署に向かったが、どこか街の様子がおかしい。署の玄関も改装されたように様子が変わっていて、ポスターを見ると2009年と書いてある。「馬鹿な、昨日は2003年だったのに!?」許巡査部長は一夜にして6年間の記憶を失っていた。呆然とする許だが、ちょうどそこに女性雑誌記者・蘆沁宜が現れ、許が昨日まで捜査していた夫と妊娠中の妻が惨殺された事件の取材で、許と会う約束をしたという。6年前の事件の真相と己の記憶を追い求める許の捜査行が始まる。奇想天外な発端と巧妙なプロットで圧倒的な支持を受け、第2回島田荘司推理小説賞を受賞。香港の鬼才が放つアジア本格の決定版。