細菌が原因の疫病は、抗生物質などの抗菌剤の使用によって消滅の道をたどっていると思われてきたが、現実にはペストの突然の大発生が起きたり、免疫系を攪乱する病原菌やハイテク武装した新顔が出現している。本書は、ヒトと細菌の長い生存競争のなかで編み出された相互の巧妙な攻防の体制を紹介しながら、多くの疫病の発生を考察し、さらに抗菌剤への過信と濫用の結果生じたMRSAなどの耐性菌の驚くべき実情と対策に言及する。