1985年秋、パリの読書界で、一冊の不思議な小説の評判が、除々に、しかし確実に広まっていった。作者は28歳の新人。フランス国内のみならず、国外からも、がぜん注目の集まったその一冊が、この『浴室』である。物語は奇妙である。語り手で、主人公でもある青年が、いつごろからか、浴室で時を過ごすようになってしまう。