『吾輩は猫である』は、謎に満ち満ちた作品である。猫の吾輩はなぜ読心術を使えるのか、苦沙弥先生はなぜ胃弱の健康オタクなのか、奥さんはなぜハゲなのか-。これらの謎解きを試みたとき、おなじみの名作は、思いがけなくもまったく新しい表情をみせた。一見、瑣末とも思われる数多のエピソードに託された漱石の本音と心意気に光を当てた、「漱石研究本」のイメージを覆す傑作オマージュ。