町人文化に彩られた文化十年(1813)、晩秋のある午後。江戸飯田町中阪下にある小さな家屋の二階で、集い語らう二人の翁がいた-。…城は既に落城寸前、時の城主里見義実は一縷の望みを愛犬・八房に託す。"恩を仇で返す不埓者。憎き仇・安西景連の首を取れっ。さすれば我娘・伏姫を嫁にやるぞ、八房"この時まだ義実は気付いていない。この一言が昔の怨念を呼び起し、里見家の未来永劫に関わる重大な一言であったことを…。日本伝奇小説の最高傑作"南総里見八犬伝"と、それを綴った曲亭馬琴の知られざる執筆生活を、著者独自の構成で描き出す世紀の名作。