持病の喘息とたたかいながら、自己を問いつめ、その孤独と絶望を、中国古典の中に、また南洋への夢に託して、気品ある文体で物語を綴った中島敦。やはり病者ならではの鋭敏な感覚と強い生命への希求をこめて、詩的散文を書いた梶井基次郎。早世した二人の天才の偉業を一冊に収めた、21世紀への日本の遺産。