「これが彼にとって4度目のスイス旅行であった。最初の旅行は18年前で、そのときは父と一緒に数日間トルーに滞在したのだった。10年後、32歳になって、ふたたびその古い湖岸の町を訪れたときには、2人で泊まったホテルを見に行くことで半ば驚きと半ば悔いの入り混じった感傷的なスリルを味わうことに成功した…。」さえない文芸編集者ヒュー・パーソンは、スイスに住む大作家Rのもとを訪れるため列車に乗り込んだ。車内で同席した若く美しい女性アルマンドに心惹かれた彼は、やがて奇妙な恋路へと足を踏み入れていく。ナボコフ一流の仕掛けが二重三重に張り巡らされ、読者を迷宮へと誘い込む最後の未邦訳作品、待望の刊行。