ロンドンからやってきたイヴリンにとって、ニューヨークは身の毛のよだつゴシックの闇のような街であった。この汚穢に満ちた街でイヴリンは黒人娼婦レイラと出会い、ともに暮らし始めるものの、彼女が重病に陥るや彼女を捨てクルマで砂漠へと向かう。みずからの心象風景にふさわしい世界に魅了されるイヴリンだったが、ガス欠で身動きがとれなくなり、孤独な夜を過ごすうちに、電気砂橇に乗り、軽機関銃で武装した何者かに連行される。連行された先は、〈ホーリー・マザー〉が支配する女だけの地下世界ベウラであった。そこベウラで外科手術を施されたイヴリンは女性のイヴとなる……野蛮な力が遍在する世界を舞台に繰り広げられるイヴの奇妙奇天烈な冒険と遍歴を、ブラックユーモアとエログロナンセンス、濃厚なアイロニーをちりばめて描いた、英国マジック・リアリズムの旗手アンジェラ・カーターによる、新たな預言の書ともいうべき傑作。