情にもろく貧乏で意気地なしの無名の画家を主人公とし、わがままでヒステリーの芸妓上りの妻との交渉を、軽妙な饒舌体で描いた自伝的作品。二人を囲む人物もみな善良で不幸な人びとばかり。人間の愚かさと悲しさをユーモラスに描いたこの作品は、『蔵の中』とともに作者(1891‐1961)の出世作となった。