明治二十四年の函館に発足した、小さな警察署。ロシアやイギリスなどの船舶が来航するというこの土地特有の事情に対応するため、署には外国語に堪能なものが集められ、小蒸気と端艇を有していた。個性豊かな署員たちを指揮するのは、アメリカ放浪経験をもつフェンシングの名手・五条文也警部。ラッコ密猟船の水夫長変死事件や、英国軍艦の水兵の切ない失踪事件などを解決するため、署員たちは日夜陸と海を駆ける-。完全復活を遂げた著者が放つ、珠玉の時代警察小説。若き日の森林太郎(鴎外)の知られざる函館訪問記「坂の上の対話」を併録。