日本のマスメディアの頂点に立つ朝日は、創刊当初から「三井」とつながり、毎日は「三菱」とつながっていた。朝日はそれをテコに権力者集団の中枢に食い込んでいく。とくに、戦前から戦中にかけて朝日の"スター"だった緒方竹虎は右翼との人脈を背景に政界と深く関わりを持つようになり、小磯、東久邇両内閣の閣僚になったのをはじめ、戦後政治のメルクマールである保守合同による「55年体制」を築き上げた。しかし、そうした中で決定的に欠けていたのが、新聞人にとっての生命ともいえる言論であったのは、なんとも皮肉である。なぜ、いつまでたっても日本の政治が成熟しないのか。また、朝日をはじめとする日本の大新聞社は、一貫して戦争責任をうやむやにしようとしてきたが、それを見過ごしてきたのはいったい誰なのか。新進気鋭の研究者が膨大な資料を駆使して書き上げた本書は、そうした根源的な問いかけに対する答えでもあろう。