日本軍隊の直接的暴力は非難されても、アジアの人々の思想と精神に残した爪痕については語られることが少ない。本書は、「満洲」文学、台湾文学をめぐる戦時下の文学者たちの言動を、確実な資料にもとづいて洗い直し、日本の旧植民地に対する功罪を問い、日本の近代化の帰結としての15年戦争像を構築しようとした画期的な論稿である。