ツタンカモンの黄金の仮面は、われわれにとっての古代エジプトを象徴しているが、ナイル渓谷のデルタ地帯に高度に集約的な農業を展開したその社会を支えた人々の姿は未だに知られていない。はたして、どんな国土に誰が住み、どんな宗教の下で、どう暮らし、どう死んでいったのか。言語も一度は完全に忘れ去られ、外界との接触もないまま滅亡した「閉じられた王国」の全貌を、数少ない資料を基に、丹念に再構築する試みである。