本当は小心者だった。だから女に溺れ、大酒を飲んだ。そして人に隠れ深夜、猛練習をした。心を読まれないように黒いシャツ、黒いズボン、黒い眼鏡で試合にのぞんだ。武器は、「右手はアクセルや。右手のスピードで飛ばすのや」という300ヤードのロングドライブと、風を切り裂いてピンに絡むパンチショット。十八歳で初優勝、二十四歳でグランドスラムを達成し、戦争の十年をはさんでまた優勝、さらにゴルフ界追放のブランクを経て十四年後再び優勝。五十六歳のときに、公式戦で三十四歳の杉原輝雄を破った日本最強のゴルファー・戸田藤一郎の破天荒な勝負師人生。